カリフォルニア州 ロックダウン下での経営 第3回
緊急必要ビジネスとは?【コロナウイルス】

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まとめ

3月19日のカリフォルニア州知事による自宅待機令は罰則規定がある法律であり、実際に違反取締も行われている。その例外であるEssential Businessは13の産業から構成されていますが、定義は非常に曖昧であり、行政側のCovid19封じ込めの為にEssential Businessの定義を狭義に規定したい思いと、生活に影響を出さないようにインフラを維持する思いが交差しています。現時点では群や市の行政がどの会社がEssential Businessかどうかを決定しており、もし営業停止指導が入った場合には迅速に訴訟経験のある弁護士事務所へ相談する事を推奨します。

自宅待機の例外規定である Essential Critical Infrastructure Workers(必須重要インフラ労働者)

3月19日に最大の人口を持つカリフォルニア州で自宅待機(Shelter in Place)が命じられた後、4日以内にテキサス州、ニューヨーク州、フロリダ州も同様の指示を出しました。この4州だけで全米の人口のほぼ1/3を占めるのでいかに急速に自宅待機が日常と化したがわかります。

4月12日現在、自宅待機令が全く出ていないのはNorth Dakota, South Dakota, Nebada, Iowa そしてArkansas のみとなっており、全米でみても自宅待機が当たり前になっています。

このような時こそ、Covid19対策を十分に取りつつ、自宅待機の例外規定である Essential Critical Infrastructure Workers(必須重要インフラ労働者)の運営と保持に全力で取り組むことにより雇用を、生活を、経済を守っていくべきでしょう。

うちの会社はビジネスを続けていいのか? そんな不安に答えるべく、「ロックダウン下での経営」第3回としてEssential business(緊急必要)について解説をします。

3月19日付のカリフォルニア州知事令 N-33-20(N-33-20)は自宅待機(Shelter in Place)を前提としており、現時点では知事は適用はしないと明言しているものの、罰則規定も刑事上の軽罪に処され、$1,000以下の罰金もしくは6ヶ月以下の懲役もしくはその両方を科す事も可能となっています。

一部の群では自宅待機違反に対して実際に違反切符を出し始めており、自宅待機令はお願いではなく、罰則規定を伴った強制力がある法律だという認識が必要です。

13の産業から構成される必須重要インフラ

必須重要インフラは自宅待機命令の例外として3月22日の通達で具体的に以下の13の産業が定義されています。これらの産業に携わる経営陣や従業員をEssential Critical Infrastructure Workers(必須重要インフラ労働者)と規定しています。以下に一般的に“Essential business(緊急必要なビジネス)”を呼ばれる業態は何かについて解説します。

医療・公衆衛生産業(HEALTHCARE / PUBLIC HEALTH)

公共部門と民間部門の両方にまたがる、大規模で産業で、一般公開された医療施設、研究センター、サプライヤー、メーカーや、それらを支える大規模な設備、ITサービスに関わる産業と定義されています。

緊急サービス産業 (EMERGENCY SERVICES SECTOR)

幅広い予防、防災、緊急時対応、および通常時の救急業務対応に関わる産業と定義されています。連邦政府、州政府、地方政府、部族政府、市警などの地域レベルにある警察署や消防署、郡保安官事務所、国防省、町の公共事業課などに加えて、産業消防団、民間警備会社、民間救急医療機関などの民間機関やボランティア組織も含まれています。

食農産業(FOOD AND AGRICULTURE)

食料及び農産業の生産・加工・配送に関わる幅広い産業で、米国内外の人や動物への食料の供給、これらに関する食材や最終製品の輸入を含む、生産者、加工業者、供給者、輸送業者、流通業者、消費者をつなぐ複雑なネットワークを支えています。食糧供給を維持し、確保するために非常に重要な産業として定義されています。

エネルギー産業(ENERGY)

電気、石油、天然ガスの生産、精製・貯蔵・販売を含む運送業、住宅、商業用施設へエネルギーや燃料を供給する国全体の成長と生産に関する産業として定義されています。

上下水道産業(WATER AND WASTEWATER)

管理当局を含む上水と廃水に関するインフラストラクチャー関連産業と定義されています。

運輸物流産業(TRANSPORTATION AND LOGISTICS)

航空産業、交通インフラ産業、商業及び公的旅客自動車運送事業者、海運業者、大量移動を担う公共交通産業、ガスや化学物質用のパイプライン産業、鉄道運輸産業、郵便及び宅配業者

通信及びIT産業(COMMUNICATIONS AND INFORMATION TECHNOLOGY)

電話・通信とそれらを支えるセキュリティやインフラ産業

その他の地域に密着した行政運営と必要不可欠な機能に関わる産業(OTHER COMMUNITY-BASED GOVERNMENT OPERATIONS AND ESSENTIAL FUNCTIONS)

行政や司法などの政府機能維持のために必要な従業員、ビルの保守やセキュリティ関連、保育園・小学校・中学校・高校・大学を含む教育関連、Covid19対応支援をしているホテル、建築関連業務、配管工・電気屋・害虫駆除屋など,コンビニエンスストア・ペット用品店・自動車用品・修理店・金物・ホームセンター・家電量販店など、必須重要インフラにサービス供給する商業小売店、スタジオを含むエンターテイメント業界、自動車レンタル業、低所得者層への必須サポート関連、弁護士・会計士、ランドリーサービス、獣医など動物飼育関連

必須な製造に関わる産業(CRITICAL MANUFACTURING)

一次金属製造業、機械製造業、電気機器、家電製品と部品製造の製造業、輸送機器製造業など

危険物取り扱い業務に関わる産業(HAZARDOUS MATERIALS)

原子力関連、医療廃棄物関連、医療用品製造業、テストキット製造など

金融サービス産業(FINANCIAL SERVICES)

顧客への流動性の提供、長期・短期の資金運用、金融リスクの移転などに関わる金融商品、保険会社、その他の信用・融資機関、およびこれらの機能を支える機関

化学産業(CHEMICAL)

基礎化学品;機能性化学品;農薬;機能性化学品;機能性化学品;農薬 基礎化学品、特殊化学品、農薬、医薬品、消費者製品

防衛基盤産業 (DEFENSE INDUSTRIAL BASE)

米軍の要件を満たすための、軍事兵器システムの設計、生産、納入、メンテナンス、サブシステム、およびコンポーネントや部品を提供や開発など。

ソース: https://covid19.ca.gov/img/EssentialCriticalInfrastructureWorkers.pdf

誰が、どのようにEssential Business(緊急必要)と決めるのか?

では、誰が、どのようにEssential Businessと決めるのでしょうか? 上記のカリフォルニア州からの定義は非常に曖昧であり、行政側のCovid19封じ込めの為にEssential Businessの定義を狭義に規定したい思いと、生活に影響を出さないようにインフラを維持する思いが出ている書面になっています。

現時点では群や市の行政が一義的にどの業種がEssential Businessに当てはまるかを決める事になります。これに不服があれば、通常では裁判所に訴えることになります。ところが現時点では裁判所の機能が必要最低限になっており、弊所の経験では通常1日の裁判関連手続きが2週間経っても処理されていない状態です。

有名な例としては電気自動車メーカー・テスラの工場をアラメダ群から営業停止指導が入り、Essential Businessではないと判断された事例がある。シリコンバレーらしく、そのやり取りの一部はTwitterで公開されている。

トーランスでは質屋が金融サービス産業(FINANCIAL SERVICES)と主張して営業を行っていたが、市の指導により業務停止になっている。

もし行政当局からEssential Businessではないと判断されたならば、営業継続に向けて行政当局との交渉になりますので、弊所のような裁判経験がある弁護士事務所へ相談をする事を推奨します。

Covid19の驚異の前にただ戸惑い、打ちひしがれるのではなく、一人ひとりが出来ることを行い、果敢に運命に立ち向かった。未来にこう評価されるかどうかは、我々の“今”にかかっています。 

Frontline記事

カリフォルニア州 ロックダウン下での経営 第2回 中小企業を救うカリフォルニア州政府支援とは?【コロナウイルス】

カリフォルニア州知事は4月2日の会見で、中小企業がビジネスを行う際に徴収している7.2%の州消費税の納税期限を$5万ドル(約500万)まで1年間猶予する案を発表しました。

$5万ドルの消費税の納税を1年間猶予する事により、実質的に速攻で企業に対して運転資金の無利子ローンを行うとしています。これから法令化がされると予想されるが、未曾有の事態に苦しむ中小企業にとっては朗報です。

カリフォルニア州知事令の対策

カリフォルニア州知事令では矢継ぎ早に対策を取っています。

カリフォルニア州立ち退きモラトリアム(California Eviction Moratorium)

下記の3つの条件を満たした場合に、住居の家賃未払いに関連する立ち退き実行の停止を3月27日から5月31日まで実施。

1)直近で家賃未払いをしていない

2)Covid19の影響(Covid19に自身が感染や感染した家族の介護、Covid19によるレイオフや就業時間短縮による所得減、学童の世話など)により家賃が全額払えない事を家賃支払い期限7日前まで書面で大家に通知

3)給与明細、解雇通知などの書面を用意

モーゲージ支払いに対して90日の猶予措置

詳細についてはローンを実行している金融機関へと問い合わせとなっており、混乱が予想される。対応金融機関は以下。

https://dbo.ca.gov/covid19-updates-fi/

ビジネス向けの救済処置

  • 税金$1Million以下の個人及び法人の税務申告期限を本来の期限である7月31日から3ヶ月延長 (EXECUTIVE ORDER N-40-20 4)
  • 6月30日までにすでに物理的に株主総会を行う旨を株主に通達した場合でも、プレスリリースなどの合理的な方法でビデオ会議に変更する旨を通達すれば、ビデオ会議での株主総会を行うことが出来る。(EXECUTIVE ORDER N-40-20 11)
  • 3月4日以降に未払いで止められた住宅の水道の復旧を命じる。(EXECUTIVE ORDER N-42-20 3)
  • 州公衆健康管により必須なインフラ(Critical Infrastructure)指定されたビジネスへの水道停止の禁止。(EXECUTIVE ORDER N-42-20 4)

連邦レベルの対策

なお、連邦レベルでは$2Trillionドル(約200兆円)の経済支援法案から$300 Billionドル(約30兆円)を給料保護プログラムなどの災害特別ローンに割り当てられていますが、ローン審査は4月3日から始まる事になっています。3月19日の自宅待機から2週間が過ぎ、未だにローンの実施は行われていません。運転資金が枯渇している中小企業には今だ必要な現金が届いていない事から、カリフォルニア州知事の案は多くの中小企業を救う事になり得る案だと言えます。

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