ヨーロッパに人々の保護を謳う、貿易障壁? Protection of People or EU?
デジタルサービス法の制度趣旨として、下記の2点をあげています。
1)デジタルサービスのすべての利用者の基本的権利が保護される、より安全なデジタル空間を創造する;
2)欧州単一市場およびグローバルなイノベーション、成長、競争力を促進するための公平な競争条件を確立する。
一見、もっともらしい目的ですが、詳しく見るとどうでしょう。
例えば”より安全なデジタル空間”とは、誰がどのように安全を定義するのでしょうか? 一方にとっての正論は、反対側にいる人間にとってはディスインフォメーション(意図的に流布される虚偽の情報)かもしれません。
正確な指摘も、大衆が理解するまでの間はディスインフォメーションと判断されかねません。
何よりも、このような懸念を生むことが、表現の自由に抑止効果(Chilling effect)を持ちかねないのではないでしょうか。
また、第2の目的の ”イノベーション、成長、競争力を促進するための公平な競争条件を確立する”とは立派な目標に見受けられますが、”欧州単一市場およびグローバルな”という前段を付けてしまうと、グローバルでは受け入れられていても、欧州では受け入れられないサービスはどのように扱われるのでしょうか。
また、公平な競争条件とは耳障りはいいですが、具体的に誰が公平な競争条件を定義し、どのように実現していき、またその結果を判断するのでしょうか?
GDPRのように、プライバシー保護を謳っいつつ、新たな貿易障壁になりかねないデジタルサービス法は、欧州の望むイノベーションは、あくまでも欧州がリードするイノベーションという偏ったものではないかと思いかねない法案と思われる可能性もあるのではないでしょうか。